サービス付き高齢者向け住宅の建築費用
介護施設を建築するためには、多額の費用がかかります。ここでは、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)の建築費用に着目。費用目安や必要な自己資金などについて解説します。介護施設の建築を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
サ高住建築にかかる費用
サ高住建築で気になるのは、費用でしょう。サ高住ではバリアフリー化はもちろん、居室内に充実の設備を備えなければなりません。このため一般的なマンションやアパート、有料老人ホームよりも建築コストがかかるのが一般的です。
建築費用目安
建築費は構造によって異なります。
- 木造:1坪77万~100万円
- 鉄骨造:1坪80万~120万円
- 鉄筋コンクリート造:1坪90万~120万円
サ高住は規模が大きい建物が多く、鉄骨造や鉄筋コンクリート造を採用するのが一般的です。複層階の場合はエレベーターなども設置しなくてはならず、その分、高額な建築費がかかります。鉄骨造3階建、延床面積300坪の施設を建てる場合の建築費は、2億4,000万〜3億6,000万円が目安です。
サ高住の建築費用の内訳
サ高住の建築費用を確認するときは、建物本体の施工費だけでなく、総事業費に含まれる項目を分けて考えることが大切です。土地を取得する場合は土地取得費も必要になるほか、建物の規模や土地の状態によっては造成費や地盤改良費が発生します。
- 土地取得費・造成費:土地の購入費、造成工事費、地盤改良費など
- 本体施工費:基礎工事、構造工事、内外装工事など
- 設備工事費:電気、給排水、空調、給湯、消防設備、エレベーターなど
- 設計・申請費:設計料、各種申請費、確認申請に関する費用など
- 家具・什器・備品費:居室や共用部の家具、厨房機器、介護用品、事務用品など
- 解体・外構工事費:既存建物の解体、駐車場、植栽、門扉、外構など
土地を所有している場合でも、建物本体の工事費だけで開業できるとは限りません。見積もりを取る際は、建築工事に含まれる範囲と、別途費用として計上される項目を確認しましょう。
サ高住の建築費が高くなりやすい理由
サ高住の建築費が高くなりやすい主な理由は、一般的な賃貸住宅よりも広い居住空間や、入居者の安全に配慮した設備が求められるためです。
- 居室面積が広い:各居室には原則として25㎡以上の床面積が求められ、一定の共用スペースを備える場合でも広さの基準があります。
- バリアフリー設備が必要:段差の解消、手すり、車いす対応の動線、広い廊下や出入口などを計画する必要があります。
- 居室ごとの設備が必要:居室内に台所、水洗トイレ、収納設備、浴室、洗面所などを設けるため、給排水や電気工事の範囲が広くなります。
- 安全設備が必要:緊急通報設備、消防設備、避難経路、エレベーターなど、建物の規模や計画に応じた設備が必要です。
こうした設備は入居者の生活に関わるため、単純に仕様を下げて建築費を抑えることはできません。必要な基準を満たしたうえで、共用部の配置や建物の形状、設備仕様を検討することが重要です。
サ高住建築の自己資金・融資・補助金・税制優遇
サ高住の建築費用は、自己資金・融資・補助金などを組み合わせて用意するのが一般的です。自己資金は総費用の25%以上が目安として紹介されることもありますが、実際に必要な金額は、土地の有無、担保評価、事業収支、運営会社、借入条件などによって異なります。
融資制度には、建設事業費を対象とするものがあります。住宅金融支援機構には、一定の条件を満たすサービス付き高齢者向け賃貸住宅を対象とした建設融資制度があり、建設事業費の100%以内を融資対象とする案内があります。ただし、融資審査、担保、保証、対象事業、受付状況などの条件があるため、利用を前提にせず、申込時点の最新情報を確認してください。
補助金については、国のサービス付き高齢者向け住宅整備事業などを利用できる場合があります。補助対象となる工事費や補助率、上限額は、建物の区分や申請年度によって異なります。交付決定前に工事へ着手できない場合もあるため、申請時期と工事スケジュールを合わせて計画しましょう。
また、一定の要件を満たすサ高住には、固定資産税や不動産取得税の軽減措置が適用される場合があります。対象床面積、戸数、補助金の交付、設備要件、適用期限などの条件があるため、建築予定地の自治体や税務担当者にも確認することが大切です。
なお、融資や補助金の対象費用は制度ごとに異なります。建築本体工事費、電気工事費、設計費、解体費、土地取得費、外構費、保険料などがすべて対象になるとは限らないため、資金計画では対象範囲を分けて整理しましょう。
サ高住の見積もり時に確認したい項目
サ高住の建築費用は、見積書の合計金額だけで判断してはいけません。業者によって見積もりに含まれる範囲が異なるため、次の項目を確認しましょう。
- 本体工事費と別途工事費の区分が明確になっているか
- 設計費、各種申請費、地盤調査費、地盤改良費が含まれているか
- 電気、給排水、空調、給湯、消防、緊急通報設備の仕様と費用が明記されているか
- エレベーター、厨房、浴室、共用スペースなどの設備費が含まれているか
- 家具、什器、介護用品、備品の費用と負担者が決まっているか
- 既存建物の解体、造成、外構、駐車場、インフラ接続の費用が含まれているか
- 補助金の対象費用と対象外費用が区分されているか
- 工事期間、資材価格の変動、追加工事が発生した場合の負担方法が明記されているか
- 完成後の修繕費、設備更新費、保守点検費をどのように見込んでいるか
複数の業者から見積もりを取る場合は、総額だけでなく、同じ条件で比較することが重要です。安い見積もりでも、必要な設備や外構工事が含まれていなければ、後から追加費用が発生する可能性があります。
想定される収益と利回り
サ高住の収入源は、一般的なアパート・マンションと同様、敷金や礼金、家賃が中心です。特徴的なのが、サービス料金が発生すること。食事の提供や安否確認、生活相談、買い物などの生活支援サービスを提供することで、家賃とは別にサービス収入を得ることができます。
利回りを試算する際は、家賃やサービス料金だけでなく、入居率、人件費、食材費、光熱費、管理委託費、修繕費、借入返済、税金なども考慮する必要があります。満室を前提にするのではなく、複数の入居率で収支を確認しましょう。
サ高住建築における補助金の活用
補助金は入居者から得る収入ではありませんが、サ高住建築に必要な初期投資の資金計画に関わります。令和8年度のサービス付き高齢者向け住宅整備事業では、新築の場合、補助対象工事費の3分の1以内、住宅部分は1戸当たり150万円を上限として補助を受けられる場合があります。
ただし、サ高住の登録基準や補助制度独自の設備・サービス要件を満たす必要があります。予算や交付決定前の着工禁止などの条件もあるため、改修や併設を含め、申請年度の交付申請要領で補助率や上限額を確認してください。
サービスの質が収益性を左右する
注意したいのは、サ高住の収益が建物だけでなく、提供するサービスによっても左右されるということです。提供する生活サービスや支援サービスの質が悪ければ空室リスクが高まってしまいます。
食事、安否確認、生活相談、夜間対応、清掃、買い物支援など、どのサービスをどの水準で提供するかによって、必要な人員や費用は変わります。入居者のニーズと地域の競合施設を確認したうえで、サービス内容と料金を設定しましょう。
サ高住建設後の運営方式と収益への影響
サ高住の建設後の運営方式には、運営会社へ一括して貸し出すサブリース方式、運営を外部へ委託する方式、オーナーが自ら運営する方式などがあります。方式によって、家賃収入の安定性、空室リスク、人材確保、サービス提供にかかる費用の負担者が変わります。
サブリース方式では、運営会社から一定の賃料を受け取る形が基本ですが、賃料の見直し、契約更新、修繕費、空室が発生した場合の扱いなどは契約内容によって異なります。契約期間や賃料の見直し条件を確認せずに、長期的な収入が保証されると判断するのは危険です。
自営方式では、家賃やサービス料金を直接収入にできる一方、入居者募集、人材採用、勤怠管理、食事提供、設備管理、クレーム対応などを自ら担う必要があります。運営を外部委託する場合も、委託費や修繕費、空室時の負担などを事前に確認しましょう。
運営方式を選ぶ際は、想定入居率、賃料、サービス料金、人件費、管理費、修繕費、借入返済額をもとに、複数の収支パターンを比較することが重要です。
そもそもサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは
サ高住とは、高齢者が安心して暮らせるよう、バリアフリー構造を備え、安否確認や生活相談などのサービスを提供する登録賃貸住宅のことです。
一般に「一般型」と「介護型」に分けて説明されることがありますが、提供される介護サービスの内容や職員配置は、運営事業者や介護保険制度上の指定によって異なります。すべてのサ高住に医療職や介護職が常駐し、医療サービスを提供しているわけではありません。
サ高住建築で注目したいのは、厳しい設計・設備基準です。サ高住を建築する際は、以下の基準を守らなくてはなりません。
- バリアフリー構造であること
- 各居室の床面積が原則25㎡以上であること。ただし、一定の共用部分を備える場合は、別の基準が適用されることがあります
- 各居室に原則として台所・水洗トイレ・収納設備・浴室・洗面所を備えていること
- 安否確認や生活相談サービスを提供できる体制を整えること
このほか、共用の居間や食堂など、入居者が利用するスペースの整備、避難経路や消防設備に関する基準への対応も必要です。具体的な登録基準や自治体独自の取り扱いは地域によって確認が必要なため、建築計画の初期段階で自治体へ相談しましょう。
新日本ビルドは、高齢化社会に対応するため「高齢者住宅・施設を共有する土地活用」を推進し、土地オーナー・施設運営事業者・利用者をつなぎ、より適した環境を提供する企業です。
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